2話 エルフとケンタウロスの愛歌
ムーブメン卓第2話。
まだみんなのキャラや信条的なものが固まってなかったので、「とりあえず手探りで色々やってみよう」みたいなつもりで組んだ、半ばギャグなシナリオ。シリアス路線で来てる最近の雰囲気とは全然ちがう。連載漫画とかでも2話目ってこういうかんじじゃん?そしていちおうAlbus aterのシナリオとの繋がりを意識している。
参加者はポーレ・ロサ・エリザ、そしてフェローとしてAlbus aterのPC、アン。回復力に一抹の不安を感じたので、そふぃ氏にフェローシートを作ってもらいNPCとして参加してもらいました(そふぃ氏は不参加)。
導入
僕は依頼を受けるまえに「それぞれの日常パート」みたいなのをわちゃわちゃやってもらうことにしています。毎回「あなたたちは酒場にたむろしてます」じゃつまらないというのももちろんあるんだけど、これは「自キャラにログインするための大事な時間」と捉えています。キャンペーンといえど1週間や2週間そこらリアル時間が空いてるわけだし、PCの肉付けを各PLが主導で自由にできる貴重な時間なのです。クエストをこなすだけじゃ扱えない、PC個人がやりたいことを進められる時間でもあるしね。
なんだけど、この時は何したか覚えてない・・・この時はまだそのことに気づいてなかったかもしれない気がするので、そもそもやってないかも?
とにかく、「それぞれの日常」を描写してあげることは非常に大事なのです。
そんなわけで日常パートは覚えてないんですが、掲示板にこんな依頼書が張り出されている。というより、これしか残ってない。
「ケンタウロス族との平和を取り持ってくれ」
依頼人は森の西に住むエルフの族長。詳細はこうだ。
「森の東に暮らすケンタウロスの部族との間に諍いが起き、あちらは非常に怒っており一触即発の状況だ。その発端は、エルフの青年が誤ってケンタウロス族の娘に矢を射ってしまったとのことだが、現場の泉はそもそも狩猟は行ってはならない取り決めの場所であるし、非常に見通しも良い。両者が不仲というわけでもない。どうにも不可解だが、自分たちが下手に動いて相手を怒らせてはまずいので、第三者に真実を調査してほしい」
そしてマスター登場。「森の北にゴブリンの大規模な群れが現れたっていうんで、冒険者たちがそっちに取られてんだよ。で、今あるのはこれ」
この時はGMとして「これしかないんで受けてください」って言っちゃった気がする。明らかにめんどくさそうな内容だもん。
この時に魔物知識判定も振ってもらい、ケンタウロスの情報を公開。
「蛮族でありながら人族との共存が可能で、妖精語を解する」ことは伝えておいた。
ちなみに真相は、森の北に発生したゴブリンの群れの工作員としてサテュロスが送り込まれ(このゴブリンの群れは他の蛮族を従えてしまうほどに強い)、森の東西に暮らすエルフ族とケンタウロス族を仲違いさせようとしていた、というかんじ。
いちおう、森の泉に住む妖精に聞き込みをしたら、「現場でサテュロスの「ラブソング」を聞いた」という証言が得られて解決できるという筋道は考えてあった。
進行
そうしてシーンを森へと移す。聞き耳振ってもらって、「どこかから、『たすけてー』というか細い女性の声がする」。
PCが駆けつけると、そこにはジャイアントスパイダーに絡め取られ、美味しく食べられようとしている女の子の姿が。ただし人じゃない。『サテュロス』という、下半身が二足のヤギになっている蛮族である。粘着質の糸に四肢を絡め取られ、いやいやと首を振る姿は大変にえっちである。
「あー!そこの人!たすけてー!かわいいボクがたべられちゃいそうだよーー!?」
ここでPCが「見捨てる」あるいは「サテュロスが捕食されるところを見ながら絶頂する」など宣言したならば、「ラブソング」を使って無理矢理助けさせる予定だった。それがシナリオのヒントにもなるし。ちなみに虫に恋愛感情などないのでラブソングは効かない。この場面でのサテュロスは本当にピンチなのです。
PCは蜘蛛を倒した。森のいさかいについて彼女が何か知っていることを期待して、サテュロスちゃんを助け出した。エリザは蜘蛛のはらわたを興味深げに弄っていた。
サテュロスちゃんはエリザにドン引きしながらも、
「ん〜よくわかんないな〜、ボクこの森のことよく知らないし」
と返します。これは前半が嘘で後半が本当。せっかく助け出してくれたのでヒントを、と思ってのことです。
サテュロスはボロを出す前にそそくさと退散。森の北のほうに向かっていきました。
そしてエルフの集落に到着。族長の話は、おおむね依頼書の通り。そして矢を射った張本人は、族長の息子だった。息子によれば、「気がついたら自分はケンタウロスの戦士らに囲まれていて、目の前には自分の矢が刺さって血を流している娘さんがいて、弁解のしようがないほど明らかに、自分がやったとしか思えないんだ。でも、証拠は何一つないし言い訳にすらならないんだけど、何も覚えていないんだ」とのこと。
族長は「どうにも納得がいかないんじゃ。このままでは長年保ってきたケンタウロス族との平和が失われてしまう。どうか助けておくれ」と懇願します。
PCらは泉に調査に行くと宣言。いまケンタウロスの集落に向かってもできることは何もなく、むしろ怒らせてしまうかも、という判断でした。至極当然な判断だと思います、じつはそうでもないんだけどね。
泉は、エルフの領域とケンタウロスの領域のちょうど中間地点。エルフの族長によれば、ここは両者が顔を合わせ世間話などをする場所となっていて、この近くで狩りなどはしてはならないことになっている。この泉には妖精が住んでいることも伝えたけど、PCに妖精語取得者がいなかったからか、妖精に聞き込みという提案はされなかった。
収穫なくて停滞しちゃうのはよくないと思い、展開を早めることにしました。PCが泉のまわりをうろついていると、
「お前たち、何をしている?」
と声がかけられる。ケンタウロス族の青年が、警戒した様子で槍を構えています。
PCが必死に事情を説明するとわかってくれたようで、
「あ〜なるほど。で、街からあなたたちがやってきたわけか。街の人はまぁ、信用してるよ。エルフ族経由で工芸品を買ってもらったりしてるからね」
ということで、ケンタウロス族の青年ビリーくんが集落に案内してくれました。
「じつはうちの部族もごたついててね。矢を射られた娘というのは、族長の娘さんなんだよ。さいわい急所は外していて大事には至らなかったけど、もちろん族長はカンカンさ。今にも総攻撃を仕掛けてやると言ってるよ。
でもあなたたちの言うように、あの泉で矢を射ること自体少し不自然だ。エルフの族長の息子とは友達だけど、そんなことするやつじゃないことは僕も知っている。
こちらも、長年かけて築いてきた人族との関係を崩したくはない。なんとか族長をなだめすかしてはいるけど、もう限界が近い。できることなら協力するよ」
PCはケンタウロスの村人らに聞き込みを開始。族長にはバレないように。
サテュロスを見てないか、との質問には、
「つい最近になって見かけたことがある。綺麗な声で歌って、鳥や魚を集めているのを見た。そうね、森の北のほうだった」
と返答。サテュロスがラブソング使えるのはわかってるし怪しいんだけど、怪しいだけでしかないもどかしさに悩むPLたち。ビリーくんに妖精語翻訳してもらったら?というのはあまりに誘導が強すぎて言い出せませんでした。
結局、もう一度サテュロスに会って話を聞きに行こうとになった。どうしよ。あんまり考えてなかった。まず、サテュロスってどこにいるんだ?北に行ったらハイいました、っていうのもなんかお使いチックすぎない?甘い甘い、詰めが甘いがねGM!
結局、「森の北のほうは別の蛮族の領域なので、サイコロを振ってもらい出目次第で出てくるものがあるよ」という裁定にした。非常に雑である。
そして出たのは低い目。危険感知判定次第では敵に遭遇してしまう。ころころ・・・1ゾロです。
「PCが気づくと、ゴブリンの軍団1d6匹・・・6匹のゴブリンに囲まれてしまっています。全員前線エリアからスタートです。」
前衛はポーレのみ、シューター2のマギシューとコンジャラー(とそしてフェロー)が全員前線で、しかも6体。魔法収束はないので、スパークは味方をも巻き込む。今にして思えば死の匂いが強すぎる。
ロサが生死判定するまでいったけど、なんとか勝った。そしてゴブリンを尋問するPCたち。ありがとう、戦闘の合間にGMも必死に考えてたぞ!
「アノオンナ、ボス、キゲントル!オレタチ、ノケモノ!アノオンナ、エルフ、ケンタウロス、ケンカサセル!」
要するに、サテュロスがラブソングを使ってエルフの族長の息子を誘惑、ケンタウロスの娘さんを襲わせたということです。
言質をとったPCはゴブリンをケンタウロスの集落まで連れて帰ることにしました。ゴブリンの口から族長に説明させることで解決を図ろうというわけですね。
ゴブリンの数を必要最小限に減らし(嬉々としてロールプレイしておりましたね)、命を保障(口約束)するかわりに証言と、その後ボスのところまで案内させることを誓わせました。GMもゴブリンの命乞いロールが楽しかったです。
そしてケンタウロスの集落に到着。族長は「今すぐサテュロスとボスとやらを血祭りにあげる!」と怒り心頭。真犯人がいるとなれば止めるものは誰もおりません。ケンタウロスの屈強な戦士たちが、ゴブリンの根城へと向かう!
ゴブリンの案内でサテュロスがいる洞窟に到着。
「ひぃっ、ボクが何したっていうんだよ!?」
「こいつらが全部喋ってくれたぞ」
「娘をよくも!覚悟せい!」
「ふんっ、役立たずなやつら!こうなったら・・・カワイイボクの歌をきけーー!」
ラブソング発動。サテュロスの魔力は高いので、全員抵抗失敗。
魔物が使うラブソングだと恋愛感情の対象は魔物になってしまうんですが、PCが使用するラブソングだと「すでに恋人や婚姻関係にある者が近くにいるのであればそちらに近寄り、そうでない場合には最も近くの異性(種族問わず)に近寄り、愛を囁きあってしまう」と書いてあったのでそっちの解釈でいかせてもらいました。
「ハッ!今日は妻と結ばれてからウン10年と120日の記念日ではないか!こうしちゃおれん、愛を伝えなければ!!」族長ダッシュ!続いて戦士たちもダッシュ!
「バーーカ!ボクはにげるっ!」
誰に恋するかは自由に決めてもらいました。結果は以下。
ポーレ→サテュロス
エリザ→ケンタウロス
ロサ→ポーレ(しかし、ポーレはサテュロスになびいたので嫉妬する、というRP)
アンはフェローなので効かない
インスタント胸の高鳴りに突き動かされ走り出すポーレ。叶わぬインスタント恋心に胸を痛めるエリザ。目にインスタント嫉妬の炎を宿し、エリザの手を引きサテュロス抹殺に向かうロサ。素知らぬ顔でサテュロスを追うアン。ラブソングはやはりギャグ展開になる。
「うわーっ追ってくんなよキモチワルイ!たすけてボスー!」
サテュロスが頼ったのはゴブリンシャーマン。こいつがボスであり、サテュロスの彼氏のようだ。
「お前・・・サテュロスちゃんの何なんだ・・・?」
今彼をぶっ殺してサテュロスを奪おうとするポーレ。さらに複雑化するインスタント・ラブ。そんな感じで戦闘開始!
ラブソングは術者が演奏を止めてもその後1時間は効果が持続します。戦闘終了後はそりゃもう大変だったことでしょう。なんて描写したかあんまり覚えてません。
目が覚め、気まずいかんじでケンタウロスの集落に戻ると、ケンタウロスの奥さんらが戸惑いながらもまんざらでもないかんじで愛を囁かれていました。
そんなかんじでエルフとケンタウロスは和解、依頼達成です。
そしてサテュロスとゴブリンシャーマンは生け捕りにしました。ポーレが蛮族動物園的なものを開きたいと。
ルール的にはどう処理したらいいんだろうか・・・わからないしポーレの立場的にもやばいことになりそうだしな・・・。できるだけ叶えさせてあげたいんだけど、さすがに無理っぽい。
「蛮族は穢れがあるから街の中には入れないよ。彼らを入れておける檻とかもすぐには用意できないから、街の近くの木に縛っておく、くらいしかできないかな」
と返答。そしてまぁ、順当に考えてこれは、逃げられておかしくない。
翌朝には逃げられちゃったよ、と結果を伝えると、後日PL的にはそれでよかったと言ってもらえた。ポーレが世間を知らないが故に無茶なことをしようとして現実を知る、というくだりはツボだったみたい。なるほど・・・PLに媚びすぎてもいけないんだな。
エピローグ
ケンタウロスの族長がお礼に、妖精の槍をくれた。売ってもいいし、使うなら土属性のついたつよい槍です。ポーレは生け捕りを諦め、剥製を展示することにしたようです。マジか・・・
感想
GMの用意したルートを選ばない、なんてことは全然あり得ることで、それを想定してなかったというか、ギミックはあったけど繋ぎをちゃんと考えられてなかったなー、という反省でした。もしこれを見て回してみようと思ってくれた方は、そのへんをうまくやってみてください。
そして、ポーレは自ら行動指針を作って積極的に動くものの、ロサとエリザは展開に引っ張られがちというか、そのキャラらしさがまだ見つかってないという印象があった。このときから、「まずは、それぞれのPCにスポットライトを当てたシナリオを一つずつやろう」と思った。ポーレとエリザは種族関連で話が作りやすいけど、人間のロサについてはそれが難しい。種族に特色がないからこそ、ロサの話で中心になってくるのは親交を深めてきたNPCや、PCとの関係性だろう。そういう意味では、スポットライトを一人ずつ当てていくキャンペーンのラストは、ロサになるのかな。みんなシリアス方面で来てるからロサもシリアスでやりたいね、まだ全然考えられてないけど、セッション重ねればエモい関係性も出てくるはず!
サテュロスちゃん